○都城市消防局救急要請受信時の口頭指導要綱

平成18年1月1日

都消訓令第16号

(目的)

第1条 この訓令は、都城市消防局(以下「消防局」という。)が行う救急要請時に現場付近にいる者に対する応急手当の口頭指導について、基本的な実施方法等必要な事項を定め、もって救命効果の向上に資することを目的とする。

(定義)

第2条 この訓令において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 口頭指導 救急要請受信時において消防局が、現場付近にいる者に電話等により応急手当の協力を要請し、口頭で応急手当の指導を行うことをいう。

(2) 口頭指導員 119番通報を受ける等の指令業務に従事している者のうち、口頭指導を行うための要件を満たす消防職員をいう。

(3) 応急手当実施者 口頭指導員により口頭指導を受け傷病者に対し応急手当を施行する者(口頭指導員の口頭指導を施行者に伝える者を含む。)をいう。

(口頭指導員の要件)

第3条 口頭指導員は、次の各号のいずれかに該当する者をもって充てるものとする。

(1) 救急救命士

(2) 救急隊員の資格を有する者

(3) 応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱(平成5年消防救第41号)に基づく応急手当指導員

(口頭指導の指導項目)

第4条 口頭指導を行う指導項目は、次に掲げるとおりとし、別表のプロトコールに基づき実施するものとする。

(1) 心肺蘇生法

(2) 気道異物除去法

(3) 止血法

(4) 熱傷手当

(5) 指趾切断手当

(口頭指導の実施)

第5条 口頭指導員は、次に掲げる場合に該当すると判断したときは、口頭指導を実施するものとする。

(1) 要請内容から応急手当が必要と判断され、効果が期待できる場合

(2) 口頭による指導で要請者側が対応できると判断できる場合

(3) 指導することにより症状の悪化を生じないと判断できる場合

(口頭指導の内容)

第6条 口頭指導員は、応急手当実施者に既に救急車が現場に向かっている旨を伝える等により安心感を持たせるとともに、原則として第4条各号に掲げるプロトコールの内容に従って指導するものとする。ただし、口頭指導員のうち第3条第1号又は第2号に該当する者が、症状の改善が期待できると判断した場合は、第4条各号に規定する以外の中毒等の処置についても口頭指導ができるものとする。

(口頭指導の中止)

第7条 口頭指導員は、次の各号のいずれかに該当するときは、口頭指導を中止することができる。

(1) 応急手当実施者が口頭指導途中において極度に焦燥、冷静さを失ったこと等により対応できないとき。

(2) 指導を続けることにより症状の悪化を生じると判断されるとき。

(実施上の留意事項)

第8条 口頭指導員は、口頭指導を行うに当たり、次に掲げる事項に留意するものとする。

(1) 救急要請者に対する応急手当を実施すると判断した場合は、第4条各号のプロトコールに従って、速やかに指導を行うこと。

(2) 救急要請者に対する応急手当の指導を実施する場合は、感染防止上の留意事項についても配意した指導を行うこと。

(3) 救急要請者に対する応急手当の指導を実施した場合は、出動中の救急隊に対してその内容について適切な方法により伝達すること。

(4) 現場に出動中の救急隊による口頭指導においては、携帯電話又はファクシミリを活用し消防局指令課と連絡を密にして行うこと。

(応急手当指導に係る記録等)

第9条 口頭指導を行った場合は、日時及び指導内容の記録を行うとともに、その指導の結果、傷病者の予後等について、救急活動記録表に記録しておくものとする。

2 消防局は、前項の記録等を利用し、指導項目の改廃、プロトコールの改善、指導方法の研究等を行い、口頭指導の高度化に努めるものとする。

この訓令は、平成18年1月1日から施行する。

(平成26年3月4日都消訓令第8号抄)

(施行期日)

1 この規程は、平成26年4月1日から施行する。

(平成27年3月31日都消訓令第4号)

この訓令は、平成27年4月1日から施行する。

(平成29年3月28日都消訓令第2号)

この訓令は、平成29年4月1日から施行する。

別表(第4条関係)

心肺蘇生法指導要領(全年齢対象)

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【心肺蘇生法の口頭指導の解説】

1 反応(意識)・呼吸の確認

● 肩を軽くたたきながら大声で呼びかけても何らかの応答や仕草がなければ「反応なしとみなす。

● 傷病者状況の把握が困難な事案においては、傷病者の活動レベルを質問する(立っている、座っている、動いている、話している)ことも考慮する。

● 迅速なCPRの開始とCPRの実施割合向上につながる可能性があることから、頭部後屈あご先挙上法を行わず、胸と腹部の動きの観察に集中させる。

● 呼吸の確認に10秒以上かけさせないようにする。

● 死戦期呼吸を「呼吸している」と誤った判断をして、心停止を見逃すことが多い。呼吸するたびに合図させるなど、規則性について質問することなども考慮する。

● 傷病者に普段どおりの呼吸を認めるときは、救急隊員がそばに到着するまでの間、傷病者の呼吸状態を継続観察し、呼吸が認められなくなった場合には再度119番通報するよう依頼する。意識はないが、呼吸が確実にあるという通報の際、可能であれば、気道確保を依頼する。

2 心肺蘇生法の口頭指導実施前の確認

● 傷病者が倒れるのを目撃した、あるいは倒れている傷病者を発見したときの通報者の焦燥感を理解し、通報者それぞれの立場や事情、心情等に十分配意しながら、救急車がすでに要請場所に向かわせていること等を伝え、安心感を与えながら落ち着かせる。

● 心肺蘇生法の継続には多大な労力を要する。良質なバイスタンダーCPRを救急隊が到着するまで持続させるため、周囲に協力を求めることができそうな状況であれば、人を集めさせる。

● 固定(有線)電話による通報の場合、傷病者のそばで電話できるよう、子機の使用、または、携帯電話から再通報させることも考慮する。また、通報者の電話機にハンズフリー機能があれば、応急手当を行いながら通話できるため、使用するように依頼する。

3 応急手当(心肺蘇生法)に係る知識や意思の確認

● 不慣れなバイスタンダーに対し人工呼吸を口頭にて指導し、実行させることが困難なため、心肺蘇生法に関する講習の受講歴などを確認する。

● 可能であれば硬いものの上で胸骨圧迫(心臓マッサージ)を行うために傷病者を移動させる。

4 胸骨圧迫(心臓マッサージ)のみのCPR

● 1分間あたり少なくとも100回から120回のテンポで胸骨圧迫(心臓マッサージ)を行わせるため、数を数える等具体的に口頭で伝える。

● 毎回の胸骨圧迫(心臓マッサージ)の後で完全に胸壁が元の位置に戻るように圧迫を解除させる。ただし、胸骨圧迫(心臓マッサージ)が浅くならないようにも留意する。

5 心肺蘇生法

● 小児の心停止、呼吸原性の心停止(溺水、気道閉塞など)、目撃がない心停止そして遷延する心停止状態などにおいては人工呼吸を組み合わせることが望ましい。

● 人工呼吸をする意志または技術をもたない、もしくは人工呼吸の実施により胸骨圧迫(心臓マッサージ)の中断時間が長くなる場合には、胸骨圧迫(心臓マッサージ)のみの実施を依頼する。

● 口頭指導の実施に際し、感染防止についても配意する。

6 救急隊到着まで

● 疲れてくると適切なテンポや深さで圧迫できなくなる恐れがある。疲労による胸骨圧迫(心臓マッサージ)の質の低下を最小とするために、救助者が複数いる場合には、1~2分ごとを目安に胸骨圧迫(心臓マッサージ)の役割を交代させる。また、交代に要する時間は最小にさせる。

● 救急隊等到着後の応急処置で、自己心拍再開の可能性をできるだけ高く維持させるため、回復兆候がみられなくても救急隊等到着まで継続するように励ます。

気道異物除去法指導要領

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【気道異物除去法の口頭指導の解説】

1 気道異物に関する通報内容

● 異物による気道閉塞の解除は緊急性が高いため、ただちに救急出動指令を行う。通報者に対して、救急車がすでに要請場所に向かっていること等を伝え、安心感を与えながら落ち着かせる。

2 反応の確認

● 気道異物に関する通報内容で反応(意識)がなければ、ただちに胸骨圧迫(心肺蘇生法)を実施させる。この時の胸骨圧迫(心臓マッサージ)は、気道内圧を高め、異物の除去を行うことを目的としたものである。

3 発生の確認

● 反応(意識)があり、発声できない状態は気道の完全閉塞である。バイスタンダーに傷病者へ気道異物の除去を行うことを説明させる。

● 反応(意識)があり、声が出せる状態であれば、傷病者自らの咳で気道の異物を除去させることができる可能性がある。バイスタンダー(通報者)は、傷病者に咳を続けさせつつ、様子を注意深く観察する。

4 発声できない場合の対応

● 気道異物除去の口頭指導時には、実効性の高い簡略的な背部叩打法のみを指導する。

● 傷病者の反応(意識)がなくなった場合、ただちに心肺蘇生法の口頭指導を実施する。

● 腹部突き上げ法(ハイムリック法)のやり方を知っている場合でも、傷病者が妊婦または、1歳未満の乳児の場合は実施させない。

5 発声ができる場合の対応

● 当初、傷病者が声を出せていても、出なくなった(出せなくなった)場合、背部叩打法を指導する。

止血法指導要領

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【止血法の口頭指導の解説】

1 出血(外傷)に関する通報内容

● 通報者の第一声が出血に関する通報内容であっても、意識の確認(しっかりと受け答えができているか)、気道・呼吸の確認(声は出せているか、呼吸様式はどうか)を必ず行い、異常があればそれぞれの口頭指導に移行する。

● 急なケガ等により出血している傷病者に遭遇した通報者の焦燥感を理解し、通報者それぞれの立場や事情、心情等に十分配意しながら、救急車がすでに要請場所に向かっていること等を伝え、安心感を与えながら落ち着かせる。

2 出血状態の確認

● どこを何で負傷し出血しているのかを確認する。

● 身体に刺さっているものは抜かずにそのまま、むやみに動かさず、深く入らないように留意させる(刺さっているものを抜くと出血が激しくなる場合がある)。

● 止血に関する口頭指導の要否を判断するため、「どんどん出血しているか」「出血が続いているか」などを確認する。

● 口腔内からの出血の場合、傷病者へ血液は飲まず、吐き出すよう指示する。意識がない場合は、血液を誤嚥させないように、体を横向けにすることなどを依頼する。

3 感染防止

● 傷病者の血液に触れないようにするだけでなく、目、口、傷口等に入らないようにも留意させる。

4 出血が続いている場合

● 片手で止血できなければ両手で圧迫させ、体重をかけて圧迫させる。

● 救助者が出血は止まったと感じたとしても、安易に押さえていたガーゼ等を外して傷口を再確認させないようにする(かさぶたのように凝固した血液がはがれ、再度出血が始まることがある)。

5 出血が止まっている場合

● 傷病者の循環動態(ショック状態の有無)を把握するため、顔色、唇、耳の色、冷や汗の有無を確認する。また、可能であれば大まかな出血量についても確認する。

● 体動などによる再出血に注意する。

熱傷手当指導要領

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【熱傷手当の口頭指導解説】

1 熱傷に関する通報内容の聴取

● 煙を吸ったか、顔に煤(すす)がついているか、のどの痛みや声がれの有無があれば、気道熱傷が疑われる。救急隊が現場到着するまでの間、呼吸状態を継続的に観察させる。

● 化学薬品による熱傷の場合、救助者への二次災害の防止に留意する。

2 熱傷部位の確認

● やけどの範囲が、背中全体、胸全体、顔全体、両足全体の場合、「体幹もしくは広範囲の場合」と判断する。

3 熱傷(四肢もしくは局所の場合)への冷却

● 冷やすことで、疼痛緩和ができることを伝える。

● 衣服を無理に脱がせようとすると、水疱が破れる恐れがある。水疱は熱傷部位の感染防止のためのバリアとなるため、人為的に破らせないようにする。

● 患部への薬等の使用を行いたいとの申し出があっても、医療機関での受診までは控えさせる。

● 小児は体表の冷却により低体温をきたしやすいので特に注意させる。

4 熱傷(体幹もしくは広範囲の場合)への冷却

● 体幹もしくは広範囲の熱傷は、冷却による低体温に陥るため、積極的な冷却は避ける。

指趾切断手当指導要領

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【切断指趾手当の口頭指導の解説】

1 指趾切断に関する通報内容、部位の確認

● いつ、何によって負傷したのかを確認し、二次災害の防止にも留意する。

● 急なケガ等により出血している傷病者に遭遇した通報者の焦燥感を理解し、通報者それぞれの立場や事情、心情等に十分配意しながら、救急車がすでに要請場所に向かっていること等を伝え、安心感を与えながら落ち着かせる。

2 負傷部位の確認

● 指等が切れて離れていない場合、再接着の可能性が高い。

3 感染防止

● 傷病者の血液に触れないようにするだけでなく、目、口、傷口等に入らないように留意させる。

4 指趾が切れて離れていない場合の対応

● 切れて離れていない場合は、止血法の手当と同等の対応を指示する。

● 不完全切断の場合、止血手当によって負傷箇所が離断しないように留意させる。

5 指趾が切断している場合の対応

● 持続する出血に対する手当を優先させる。出血が続いている場合は、止血法の手当と同等の対応を指示する。

6 切断指趾の確認

● 切断した指趾は医療機関に持って行くため、できる限り確保させる。

● 再接着の可能性については言及しない。

7 切断指趾が見当たらない場合

● 救助者が複数いる場合、傷口への手当と切断端の検索等を手分けして対応させる。

8 切断指趾が確保できている場合

● 切断指趾の汚染が激しい場合、水道水で汚れを流し、可能な限り清潔な状態を保たせる。

● 再接着の可能性が最大限高くなる医療機関への搬送が速やかに行われるよう、救急隊活動の支援(地域の実情に応じ、高度救命救急センターへの傷病者受入れの事前交渉や、長距離搬送の時短化のためのドクターヘリ要請など)を考慮する。

都城市消防局救急要請受信時の口頭指導要綱

平成18年1月1日 消防訓令第16号

(平成29年4月1日施行)